「ソーシャル×ローカルに根ざしたホテルを」若手ホテルプロデューサー龍崎さんが語る、新しいホテルの形

「ソーシャルホテル」をコンセプトに掲げ、21歳という若さながら、全国各地に次々とホテルをプロデュースをしている新進気鋭の女性経営者、龍崎翔子(りゅうざき・しょうこ)さん。
東大出身、ホテル王、若手女性経営者…そんな華々しい肩書きで紹介される事が多い彼女ですが、実はそこに至るまでには世間には知られていない長い葛藤と挫折がありました。今回は、21世紀を生きる女性のためのレッスンクラブSHElikesでのご登壇に先立ち、そんな彼女がどのようにそれらの挫折を乗り越え、HOTEL SHE,を現在の姿に成長させていったのかを紐解いていきます。

インタビュワー:L&G GLOBAL BUSINESS Inc.コミュニティマネージャー 金井塚さん


1.お客様の声から閃いた、旅先での出会いのニーズ

ー(金井塚さん、以下略)現在、どのようなホテルを経営されているのか、コンセプトと共にお聞かせください。

今は3拠点でホテルを経営しております。まず最初に北海道の富良野で「petit-hotel #MELON 富良野」を始めました。その後京都に「HOTEL SHE, KYOTO」、続いて大阪で「HOTEL SHE, OSAKA」をオープンさせました。「ソーシャルホテル」をコンセプトに展開しており、2017年には北海道の層雲狭で温泉旅館をオープンする予定です。

ー最初のホテルは北海道でオープンされていますが、思い切った場所に行きましたよね。龍崎さんのホテル経営の原点となる、その当時の話をお聞かせください。

大学1年生までひたむきにホテル経営を目指して頑張っていましたが、なかなか思うように実現できず、挫折を繰り返しました。ホテルの夢を諦めかけたとき、airbnb※やゲストハウスなど新しい宿泊のあり方と出会い、自分でもできるかもしれないと思い、偶然見かけた北海道のペンションを引き継ぐことになったんです。それまでホテルの運営に携わったことがなかったため、実際に現場を知りたいと思い、渋谷のホテルでアルバイトをし、ホテルについてたくさん学ばせていただき、それから北海道に飛びました。北海道の富良野にある築30年のペンションを引き継ぎ、簡単にリノベーションを施して「petit-hotel #MELON」というプチホテルとして開業しました。そのホテルが自分の原点になりますね。
それからは母と二人でホテルを切り盛りしましたが、毎日てんやわんやでした。簡単なコンチネンタル朝食を準備するために自分達で朝ごはんを準備するところから、部屋やお風呂の掃除、草むしり、予約サイトの管理やお問い合わせの電話対応までも全部自分たち。そんな中でも、徐々にお客さんが来るようにになってきました。ただ、パートさんはいるけど人も足りず、料理も出来ず、部屋も豪華ではない。そんな中でお客様に満足していただくためにはどうしたらいいか、日々試行錯誤をしていました。

ー改善の施策の1つとして、かわいいデザートを出していましたよね。


「富良野デザートメニュー案(初期)」

メニュー等の改善は挑戦してましたね。そのうちの1つに、ハッピーアワーとしてレストランに無料で飲めるお酒を大量に置いたんです。それがお客さんに好評で、あるときとびきり嬉しそうなお客さんがいたんです。理由を尋ねると「友達ができたんだ」と。実際、外国のお客さん同士が話していて意気投合することや、家が近所同士なことが発覚して仲良くなることも多くて。
そのとき閃いたのが、「清潔、安い、アクセスがいい」といった顕在的なニーズとは別に、「いざあると嬉しいニーズ」として、「旅先で人と出会うこと」があるのではないかということ。そして、自分はこの「旅先での人と人との出会い=ソーシャル」を切り口に、ホテルを活かすことができるのではないかと考えたんです。それまではローカル性を突き詰めたホテルを作りたいと考えていたのですが、ソーシャ性をもう一つの軸にしようと考えたんです。

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「富良野でゲストと」

2.ホテル王を目指したきっかけ

ー現在、その「ソーシャル性」を軸にホテルを展開されていますが、そもそも、ホテル経営をやりたいと思ったのは何歳ごろでしたか?

遡ると小学2年生の頃、家族で企画したアメリカ横断旅行が原点になりますね。親の仕事の都合で半年ほどアメリカに在住しておりましたが、最後の1か月間だけ横断ドライブをしました。親は楽しそうにドライブしていましたが、後部座席に座っているだけの私はあまり楽しむことができなくて。唯一、ホテルに着いて泊まることだけを楽しみにしていました。ただ、それでもアメリカは街によってカルチャーが異なるのに、ホテルだけは取り残されているように同じことが不満でした。そこで、カルチャーが取り込まれたホテルがあればいいのに、と考えたのが原体験になります。

「アメリカ時代」

ーホテルに対する漠然とした不満を抱いてたんですね。そこが原体験とは面白いですね。今、Airbnbで「その街で暮らすように、ローカルを感じる」というコンセプトが当たり前のようになっていますが、龍崎さんは当時からその感覚があったのかもしれませんね。

ホテルの不満を漠然と抱えていた時、たまたま、小学5年生で読んだ『ずっこけ3人組』という小説でホテル経営者という仕事を知るんです。直感的に、自分はホテルの経営者になりたかったんだ、と感じました。小学校の卒業文集には、「ホテルの経営者になりたい」と書くようになってました。そこから、ホテルの経営者になるためにはどうすればいいか考えました。ロールモデルもおらず、所有すべき資格もないので、より高い環境に行きたいと考えて東京大学を目指しました。

3.鬱々とした大学生活と一筋の光

ー大学に入学してからはどのように過ごしましたか?

いきなりホテル経営を始めるのではなく、まずはビジネスのことを知りたくて色々な企業でアルバイトをしていました。その中で、面白いと思ったビジネスはなんでも手伝っていました。香港におむつを輸出したり、アイドルのプロデュースをしたり、インバウンド事業をしたり…。
ただ、やはり自分がやりたい仕事ではなかったので、全てただのタスクになっていましたね。

ー自分が何のために働いているのか、分からなくなる状態ですね。

まさにそうですね。自分に一体何の価値があるんだろうと悩んだり、抱えていたプロジェクトも潰れたりして、いろんな意味で苦しい時期でしたね。この先に夢だったホテルを経営している未来が思い描けなくて、当時は自転車を漕いで走りながらく泣こともありました。

「SHE, OSAKAポートレート 」

ただそんな一方、その頃ちょうどAirbnbが流行り始めた時期で、友達同士で泊まりあって、サービスの研究もしていました。
同時にゲストハウスも流行ったのですが、今までのカプセルホテルのようなものと違い、カフェのようなオシャレで居心地のいい場所に泊まるという概念がその時期に初めて出てきたんです。
その中の一つとして、フリーターのみんなでお金を貯めてゲストハウスを開いたという「東京ゲストハウスtoco」発起人のインタビュー記事を見かけたのですが、それを読んで、どんな職業についていてもホテルの経営ができるのだということも知りました。
それまで、ホテルといえばトランプタワーの様な大きい箱をイメージしていたのですが、部屋とベッドがあって、遠くからいらっしゃった方を泊められればそれだけでホテルになるんだ、だったら、自分でも今すぐできるのではないかと閃きました。まさに、大きすぎる夢を等身大に考えられた瞬間でした。

4.「ローカル×ソーシャル」を軸に、新しいホテルの在り方を示したHOTEL SHE, OSAKA

ーそれから富良野のホテルの経営を経て、ソーシャル性という新しい軸の元にHOTEL SHEが出来上がったんですね。ホテルにはどのようにそのコンセプトを取り入れたのですか?

「petit-hotel #MELON 富良野」の運営が落ち着いた頃、京都でホテルをオープンする案がでてきたんです。北海道のホテルで思いついたソーシャル性を軸にプロデュースしたいと考えました。ただ、予算がないこともあり、インテリアデザインなどは全て自ら行いました。その結果、正直100%自分が思う仕上がりにはできませんでした。パーティを開催したりプロジェクションマッピングも設置したりしたのですが、自分のコンセプトを100%アウトプットに落とし込めているように思えず、またソーシャル性も不十分だったと感じており、より箱としての魅力のある、人と人が気軽に話せるようなホテルを作りたいと考えていました。

「SHE, KYOTOのチェックインの光景」

そうして次に誕生したのが、HOTEL SHE, OSAKAです。
それまで、京都のホテルはスタッフやゲストなど、「人」というコンテンツしかなかったのですが、大阪では「コーヒー」「レコード」「アート」などのコンテンツを増やしているので、そこが明確に今までのホテルと異なります。レコードをロビーと各部屋に配置したり、コーヒーにこだわったり、そのようなパーツを起点に人が繋がれる仕組みを意識して設計しました。実際にレコードの前では常にお客様同士やスタッフとの会話が生まれているので、とても嬉しいです。

ー大阪のホテルではこの外装を気に入ってくれたアパレル等の方々から、ポップアップのショップをしたいという依頼もきますよね。結局、資本力による食事の豪華さや調度品の高価さ、デザイン性では我々は勝負できないので、その点をソーシャル性やコミュニティー創りといったやソフトウェアで勝負したところが、差別化要素だったと考えます。ただ、ソフトウェアのコンテンツを人だけに依存しても継続性が難しいので、HOTEL SHE, OSAKAはそこを空間にうまく落とし込めたと思っています。

「SHE, OSAKAポートレート」

レコードを前にすると色々な方の会話が生まれているので、ソーシャル性を育むいいコンテンツになっていると実感しています。これから、徐々に形成されていくこのコミュニティをどう育てていくか、が重要な課題ですね。このホテルが、宿泊客の方々のみでなく、ローカルな方々にも愛され、相互に混じり合ういいコミュニティの場になれば嬉しいです。そういった意味で、ホテルは泊まって寝るだけではの施設ではなく、もっと余白が広がっていく空間であるべきだと思っています。

ー僕もホテルという箱の可能性を広げていきたいと考えています。ただ宿泊するためだけの場所ではなく、クラブのようにDJイベントをやってもいいし、企業とタイアップして展示会を開いてもいいし、可能性は無限大だと思います。学校みたいな人と人とが学び合う場としても機能させられると思うので、いつか、SHEdesignsを開催して頂くのも面白いかもしれませんね(笑)。


▷龍崎さんのレッスン情報

そんな龍崎さんがSHElikesのレッスンにご登壇されます!

SHElikesのサイトからご予約が可能ですので、ご興味ある方は是非サイトをご確認下さい。

レッスン名:「SHEmeetsSHE,~2つのSHEが考えるコミュニティの可能性~

開催日時:2017年9月25日(月) 20:00-22:00

開催場所:SHElikes 表参道教室(※表参道駅から徒歩5分の場所です)

申し込みはこちら:http://she-works.jp/likes/?utm_source=owndmedia&utm_campaign=interview&utm_content=20170922_001

▷編集後記

お二方とも、お話をありがとうございました。ソーシャルとローカルを軸にホテルの可能性を無限大に広げていく過程から、龍崎さん達ならではの視点を感じました。一緒にコミュニティ作りを考えたい方は、ぜひSHELlikesにいらしてくださいね。

SHEshares編集部 大原

龍崎翔子(りゅうざき・しょうこ) 

2015年にL&G GLOBAL BUSINESS Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに掲げ北海道・富良野の「petit-hotel #MELON 富良野」や京都・東九条「HOTEL SHE, KYOTO」をプロデュース。2017年9月には大阪・弁天町でアナログカルチャーをモチーフにした「HOTEL SHE, OSAKA」を、2017年12月には北海道・層雲峡でCHILLな温泉旅館「ホテルクモイ」をオープン予定。

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